2022年2月にVeterinary comparative oncologyからは、ORIGINAL ARTICLEが3報投稿された。
論文1
“Staging canine patients with appendicular osteosarcomautilizing fluorine-18 fluorodeoxyglucose positron emissiontomography/computed tomography compared to whole bodycomputed tomography”
コロラド州立大学のDr. Lynn R. Griffinらのグループから報告された論文で、犬の骨肉腫患者のステージングにおける18F-FDG PET/CTの有用性に関する内容である。
論文2
“Histologic grade has a higher-weighted value than nodal status as predictor of outcome in dogs with cutaneous mast cell tumours and overtly metastatic sentinel lymph nodes”
University of Bologna (Italy)のDr. Laura Marconatoらのグループから報告された論文で、犬の皮膚肥満細胞腫における予後因子として組織学的グレードが重要であると結論づけている論文である。
論文3
“Adaptive radiation therapy using weekly hypofractionation for thymoma treatment: A retrospective study of 10 rabbits”
University of Guelph (Canada)のDr. Hughes H. Beaufrereらのグループから報告された論文で、胸腺腫治療における週1回の低分割の適応的放射線治療に関するウサギ10羽の回顧的研究である。
この記事では、骨肉腫と肥満細胞腫の論文の2つについて簡単に解説する。
論文1
“Staging canine patients with appendicular osteosarcomautilizing fluorine-18 fluorodeoxyglucose positron emissiontomography/computed tomography compared to whole bodycomputed tomography”
本論文では、四肢に発生する犬骨肉腫患者のステージングにおける18F-FDG-PET/CTによる方法と全身CTによる方法を比較している。
本論文を理解するために必要な基礎知識
・骨肉腫とは?
骨肉腫は、骨腫瘍の約85%を占めており、局所浸潤性や遠隔転移能が高いため悪性度の高い腫瘍である。治療法は、外科手術、化学療法、放射線療法を組み合わせるが、最適な治療法の選択には、治療開始前の厳密な病期分類が重要である。
・18F-FDG PET/CTとは
人医療ではより診断精度の高い18F-FDG PET/CTが活用されている。獣医療でも18F-FDG PET/CTを活用できる可能性があるものの、ほとんど報告がないのが現状である。
本論文の概要
獣医療では骨肉腫のステージングは、胸部レントゲンやCT検査で骨肉腫のステージングを行うことが一般的であった。しかし、最適な治療法を選択するためには診断精度の高い方法が確立されなければならない。
そこで筆者らは、18F-FDG PET/CTに着目したのである。本研究では、犬の骨肉腫患者のステージングにおける18F-FDG PET/CTの有用性を示すために、全身CTを活用したステージング法と診断精度を比較した。具体的な方法は、5人の画像診断の専門医が66頭の骨肉腫患者をステージングするというシンプルなものだ。
結果として、 “18F-FDG PET/CTでは少なくとも一人の画像診断医が、10頭(計13領域)の転移病変を発見したのに対し、全身CT検査では誰一人としてそれらの転移病変を発見できなかった”と筆者らは述べている。さらに、この結果から、“18F-FDG PET/CTは、全身CT検査と比べ犬の骨肉腫患者における転移病変の発見に有用な検査である”と筆者らは結論づけている。
日本国内においては、骨肉腫の好発犬種である大型犬の飼育割合が少なく、発生数は少ない。さらに、18F-FDG PET/CTが使用されている施設も存在しない。本論文の内容はすぐに役立つ可能性は低いかもしれないが、将来18F-FDG PET/CTが国内の獣医療でも普及する可能性を見据えて、頭の片隅に覚えておいても良いかもしれない。