Neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL)は、腎障害の新しいバイオマーカーである。また、NGALはさまざまな種類のヒトのがんの発がんにも関与している。NGALの発がん性は、その分子形態に関連しており、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)とのヘテロ二量体形成は、ヒト乳がんの浸潤と転移を促進する。これまで、犬の乳腺腫瘍(CMT)において、NGALおよびNGAL/MMP9複合体のレベルはまだ調査されていない。そこで、本研究では、NGALとその分子形態がCMT診断のためのバイオマーカーとなりうるかどうかを調べることを目的とした。この目的のために、乳腺上皮細胞および尿サンプルにおけるNGALとMMP9の発現プロファイルを検出した。免疫組織化学的染色により、NGALは様々なレベルで発現していた。HBCとは異なり、良性および悪性のCMTでは、正常対照者と比較してNGALの発現が有意に低下していた。さらに、転移性CMTの犬ではNGALの発現が有意に低下していた。一方、MMP9発現の平均スコアを昇順に並べると、正常群、良性群、悪性CMTsとなった。興味深いことに、分子形態の分析により、NGAL/MMP9複合体は良性または悪性CMTの犬のほとんどの乳腺組織と尿に存在するが、CMTのない犬のサンプルには複合体が存在しないことが明らかになった。結論として、NGALとMMP9は、犬の乳腺上皮細胞において、正常および癌の状態でユビキタスに発現している。しかし、NGAL/MMP9複合体は、腫瘍のある犬の乳腺組織や尿にのみ存在する。