新規の白金誘導体であるトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンと白金の複合体(Pt-TCEP)の抗がん作用をイヌ(D-17)およびヒト骨肉腫(U2-OS)細胞株で評価した。高濃度(0.625, 1.25, 2.50, 5, 10, 20μM)のPt-TCEPを24時間または72時間インキュベートした後の細胞の生存率をMTTアッセイで調べ、シスプラチンの効果と比較した。Pt-TCEPの長期効果は、Pt-TCEP(2および3μM)に24時間暴露し、その後2週間培養した後、コロニー形成単位アッセイで評価した。細胞周期に対する影響は、Pt-TCEP(3μM)を24時間処理した後に測定した。プロアポトーシス活性は、Pt-TCEP(1.25, 2.50, 5, 10, 20 μM)で24時間処理した後、フローサイトメトリーを用いて調べた。また、アポトーシスに関与する主要なタンパク質の発現を、3または5μMのPt-TCEPを24時間処理した後にウェスタンブロットで測定した。両細胞株において、Pt-TCEPはシスプラチンよりもはるかに効果的に細胞の生存率を低下させた。Pt-TCEPのIC50は、24時間後にD-17で5.93±0.12、U2-OSで3.45±0.14、72時間後にD-17で1.77±0.14、U2-OSで1.53±0.11であった(P < 0.05)。この化合物は、細胞をG2/M期に停止させ、細胞のコロニー形成能を阻害した。Pt-TCEPはカスパーゼ依存性のアポトーシスを誘導した。抗アポトーシス作用のあるBcl-XLタンパク質の発現は、両細胞株ともPt-TCEP処理後に減少した。この結果から、Pt-TCEPの犬およびヒト骨肉腫細胞株に対する抗がん作用が確認された。