センチネルリンパ節(SLN)の評価は正確な癌の病期診断に重要である。水性造影剤を用いたコンピュータ断層撮影(CT)によるリンパ管造影は,イヌのSLNを同定するための実現可能な技術である。多くの研究では90%前後の成功率が報告されているが、60%という低い成功率も報告されている。成功率が低い理由の一つとして、使用する様々な薬剤の粘度が通常のリンパの粘度と異なることが考えられる。本研究の目的は、SLN同定のためのCTリンパ管造影に使用する粘度の異なる造影剤を評価し、マッサージが造影剤の流量に与える影響を明らかにすることであった。仮説は、低粘度の造影剤は高粘度の造影剤に比べてSLNの識別に成功する割合が高く、識別までの時間が短いというもので、マッサージによって造影剤の流量が増加すると考えられた。犬に麻酔をかけ、粘度の異なる4種類の造影剤を用いて、無作為化クロスオーバーデザインでCTリンパ管造影を行った。試験日2日目に両側の背腹に注射を行い、膝窩リンパ節の造影剤の取り込みを評価した。SLN同定の成功率およびSLN同定までの時間は,4剤間で有意な差はなかった。注射部位をマッサージすることで、リンパ管内の造影剤の流入速度が増加した。これらの結果から、ある造影剤を他の造影剤と比較して特別に推奨することはできない。犬で水性造影剤を用いたCTリンパ管造影を行う際には、リンパの流れを改善するためにマッサージを行うことが推奨される。