このレトロスペクティブ研究は、診断時に全身のコンピュータ断層撮影(CT)を受けた尿路上の移行細胞がん(TCC)の犬において、生存率に関連する因子を評価し、腫瘍の局在間の特徴を比較することを目的としたものである。2010年から2017年の間に内科的治療を受けた組織学的に確認されたTCCの犬を対象とし、原発性腫瘍に対して手術や放射線治療を受けた犬は除外した。CT所見に従い、原発腫瘍の局在(膀胱群、尿道群、膀胱・尿道群に分類)、前立腺への浸潤、腸仙骨リンパ節腫脹、胸骨リンパ節腫脹、骨・肺への転移を評価し、生存率分析を行った。診断時のCTにより、腸仙骨リンパ節腫脹、胸骨リンパ節腫脹、骨転移、肺転移がそれぞれ65頭の犬の47.7%、18.5%、24.6%、35.4%に認められた。全生存期間の中央値は196日であった。多変量解析では、TCCの局在(ハザード比[HR]、1.90;P=0.037)、骨転移(HR、2.76;P=0.013)、胸骨リンパ節腫脹(HR、3.56;P=0.004)が生存期間と有意に関連していた。膀胱群(n=16)と比較して、尿道群(n=26)では、骨(6.3%対42.3%;P=0.045)および肺(6.3%対46.2%;P=0.022)への転移率が高かった。生存期間は、膀胱群よりも尿道群の方が短く(121.5日 vs 420日;P < 0.001)、雌犬でのみ同程度であった(247日 vs 420日;P = 0.031)。これらの結果は、全身CTが尿路性TCCの予後を予測するのに有効であることを示唆している。