獣医学的な研究では、犬の副腎摘出術の結果が報告されているが、これらの研究では一般的に、脈管侵襲の有無を含めた様々なサイズの副腎腫瘍が対象となっている。本研究の目的は、組織学的に確認された脈管侵襲のない小型副腎腫瘍を副腎摘出術で治療した犬のコホートにおける転帰を報告することである。このレトロスペクティブ研究は、2010年から2017年にかけてフロリダ大学とカリフォルニア大学デービス校のデータベースのデータを用いて行われた。最大径≦3cmの副腎腫瘍の切除を受けた犬で、コンピュータ断層撮影で評価したどの部位にも脈管侵襲の証拠がない場合を対象とした。51匹の犬が組み入れ基準を満たした。副腎摘出術を受けた犬の短期生存率は92.2%,1年間の疾患特異的生存率は83.3%であった。51頭中28頭(54.9%)が悪性腫瘍と診断された。軽度の合併症は、術中および術後によく観察された。重大な合併症は6頭に認められ、突然死、呼吸停止、急性腎不全、出血、低血圧、誤嚥性肺炎などであった。短期死亡は4頭であった。死亡に至る主要な合併症としては、突然死と出血が最も多かった。副腎摘出術は、これまでに報告された周術期死亡率の高さから議論を呼ぶこともあるが、本研究の結果は、血管侵襲のない小さな腫瘍に対する副腎摘出術が低リスクで実施できることを裏付けている。