「腸管T細胞リンパ腫は犬では一般的であるが、リンパ球の関与を伴う腸炎を伴うため、病理組織学的診断は依然として困難である。確実な鑑別のためには、侵襲的に採取した全層生検が依然として必要である。犬の腸管T細胞リンパ腫における特異的なマイクロRNAの発現パターンの検出は、腸管リンパ腫を良性の炎症と区別するための新たな可能性を提供し、リンパ腫の発生に関するさらなる理解につながる可能性がある。本研究の目的は、犬の腸管T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性腸炎、および健康な腸管組織から採取したホルマリン固定・パラフィン包埋サンプルの異なるグループにおけるマイクロRNAの発現を特徴づけることであった。1グループ2サンプルの予備テストでは、total RNAを抽出し(RNEasy FFPE Kit, Qiagen)、逆転写し(miScript II RT Kit, Qiagen)、プリアンプを行った(miScript PreAmp PCR Kit, Qiagen)。microRNA PCR Arrayプレート(Qiagen)を用いて、183種類のイヌの成熟したマイクロRNAについてあらかじめ反応させた上で、比較定量PCRを行った。その後、リンパ腫群で発現変化が顕著な12種類のmicroRNAを選択し、各群の全サンプル(n = 8)のmicroRNA発現を、逆転写されたRNAを用いた個別のmicroRNAアッセイ(miScript Primer Assays, Qiagen)を用いて、事前増幅なしで解析しました。その結果、リンパ腫に特異的な発現パターンが明らかになり、腫瘍を抑制するマイクロRNAであるmiR-194、miR-192、miR-141、miR-203の発現が低下し、miR-106a~363クラスターのマイクロRNAを含む発がん性マイクロRNAの発現が上昇していました。さらに、健康な腸管組織とリンパ球形質細胞性腸炎の症例との間では、わずかな発現変化しか検出されなかった。以上のことから、マイクロRNAの発現パターンは、T細胞リンパ腫と健康な組織や良性の炎症性疾患との分離に利用できると結論づけた。