犬の皮下軟部組織肉腫(sSTS)を覆う皮膚への腫瘍の浸潤に関する研究は不足している。腫瘍が浸潤していない場合には、この患部のない皮膚をそのままにしておくことで、手術を簡略化できる可能性がある。本研究の目的は、sSTSの上にある皮膚に腫瘍細胞が浸潤しているかどうかを調べることである。外科的治療を受けたsSTSの犬が前向きに登録された。切除後、皮膚は自然な外科的切断面に沿って腫瘍から切り離され、組織学的に評価された。sSTSを有する29頭の犬が対象となった(グレードIが22頭、グレードIIが6頭、グレードIIIが1頭)。sSTSを覆う皮膚は14/29例(48.3%)で腫瘍の浸潤を認めなかった。浸潤の頻度は、グレードの高いsSTS(グレードIIおよびIII、100%;P = 0.006)で観察された。それにもかかわらず、8/22例のグレードIのsSTS(36%)では、皮膚への浸潤も認められた。この浸潤は、腫瘍に直接触れている皮膚の真皮にまで及んでいた(11例は多房性、4例はびまん性)。グレードIのsSTSでは皮膚への腫瘍浸潤の頻度は低く、局所制御の可能性を高めるためには、どのsSTSでも広い範囲を切除することが最も安全な治療法であると考えられるが、本研究では、sSTSに直接接触している皮膚のみが腫瘍浸潤していることが証明されたため、より積極的ではないが局所治癒を目的とした皮膚切除の可能性を示している。特に低悪性度のsSTSでは、この皮膚のみの切除が完全な局所制御を保証することを確認するために、さらなる研究が必要である。