本研究では、イヌの限局性小腸リンパ腫(SIL)について、臨床および病理組織学的特徴に基づいて、信頼できる治療バイオマーカーを決定することを目的とした。我々は、手術を受けた36頭と化学療法を受けた48頭を含む、限局性SILの犬84頭をレトロスペクティブに調査した。手術を受けた犬は、全生存期間(OS)<120日(OS中央値)の18頭(グループ1)と、OS≧120日の18頭(グループ2)の2つのサブグループに分けられた。同様に、化学療法を受けた犬は、OS<98日(OS中央値)の24頭(グループ3)とOS≧98日の24頭(グループ4)に分けられた。臨床的、血液学的、病理組織学的、免疫組織化学的分析を4つのサブグループ間で比較評価した。手術群と化学療法群の間でOSに有意な差はなかった。手術を受けた犬では,Ki67陽性細胞の割合は,第1群が第2群に比べて有意に増加し,第3群と第4群の間には有意な差はなかった。化学療法を受けた犬では、O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)の割合が第3群で第4群に比べて有意に高く、第1群と第2群の間には有意な差は見られなかった。また、Ki67の発現量が多い犬では、手術よりも化学療法の方がOSが有意に上昇する可能性があり、MGMTの発現量が多い犬では、化学療法よりも手術の方がOSが有意に上昇する可能性があり、Ki67とMGMTは互いに独立しているというデータが得られた。Ki67とMGMTの指標は、犬の限局性SILに対する最適な第一選択治療を決定するための治療バイオマーカーとして示唆された。