Snai2遺伝子にコードされるSLUGは、上皮間葉転換(EMT)に関与することが知られており、いくつかのタイプのヒトの癌では、細胞の浸潤や転移に寄与している。しかし、犬の扁平上皮癌(SCC)におけるEMTのメカニズムと役割はまだ解明されていない。我々はこれまでに、扁桃腺SCCを含む犬の口腔SCC細胞株を樹立しており、本研究では、犬SCC細胞のEMTに関する表現型に対するSLUGの影響を評価した。まず、免疫組織化学的な解析により、犬の口腔SCCの組織では、非腫瘍性の口腔粘膜に比べてSLUGが発現していることが明らかになった。さらに、SLUGの機能獲得および機能喪失により、SLUGが細胞の移動と浸潤に一部寄与し、ビメンチンやSNAILなどのEMTマーカーの発現が増加することが明らかになった。このように、今回の研究では、SLUGがイヌの口腔SCCだけでなく、ヒトのがんにおいてもEMT誘導を介して細胞の移動と浸潤を促進することが示唆された。