化学療法誘発性下痢(CID)は、犬において頻繁に起こる化学療法の有害事象である。しかし、現在のところ、その管理に関するコンセンサスは得られていない。スメクタイトは天然の粘土であり、人間の急性下痢の治療に広く用いられている。本研究の目的は、犬のCID管理におけるスメクタイトの有効性を評価すること、およびCIDに関する疫学データを収集することであった。下痢のエピソードごとに、犬は2つの管理グループに無作為に分けられた。スメクタイト群は、スメクタイトを1日0.5g/kg POを2~3回に分けてCID発症時に投与を開始し、対照群は初期投薬を行わなかった。両群とも、CIDが進行したり、48時間以内に改善されない場合は、レスキュー用のメトロニダゾールが処方された。60頭の犬が募集され、2017年6月から2019年3月までに426回の化学療法投与を受けた。CIDの発生率は110/426(25.8%、95%CI:21.7%~30.2%)で、投与した化学療法薬間で有意差があった(P<0.001)。メトロニダゾールは,スメクタイト群では5/54件(9.3%,95%CI:3.1~20.3%),対照群では40/56件(71.4%,95%CI:57.5~82.3%)に投与された(P < 0.001)。下痢が解消するまでの時間は、スメクタイト群(中央値:19.5時間、四分位範囲[IQR]:13.5~32時間)が対照群(中央値:53時間、IQR:31.5~113.5時間)に比べて短かった(P < 0.001)。本研究の結果は、犬のCIDのファーストライン管理におけるスメクタイトの投与を支持するものである。