良性乳腺腫瘍は、コンパニオンラット(Rattus norvegicus domestica)の最も一般的な腫瘍の一つであると同時に、動物福祉上の大きな問題であり、安楽死の問題でもある。本研究の第一の目的は、腫瘍化した乳腺組織と正常な乳腺組織におけるエストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン、プロラクチンの各受容体の発現を評価し、これらの受容体の発現を群間で比較することであった。第2の目的は、新生物の乳腺組織におけるこれらの受容体の発現が、全生存率および最初の乳腺腫瘤切除後の追加腫瘤の発生と相関するかどうかを調べることである。第3の目的は、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲンおよびプロラクチン受容体の発現が、乳腺腫瘍の臨床パラメータや動物の年齢と関連するかどうかを調べることであった。コンパニオンラットから32個の良性乳腺腫瘍を採取し、プロラクチン受容体、エストロゲン受容体α(ERa)、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体(AR)の免疫組織化学染色に供した。乳腺腫瘍(n=32)とその周囲の正常乳腺組織(n=20)が存在する場合は、Allredスコアを取得した。プロラクチン受容体の発現は乳腺の腫瘍化に伴い有意に増加し(P < 0.0001)、ARの発現は腫瘍化に伴い減少した(P < 0.0001)。腫瘍間質におけるERaの発現低下は、生存期間の短縮と関連していた(P = 0.02)。ホルモン受容体の発現は、年齢、腫瘤径、部位、および追加の腫瘤発生の可能性とは有意に関連しなかった。さらなる研究では、良性乳腺腫瘍のコンパニオンラットを対象としたプロスペクティブな研究で、プロラクチン拮抗薬の効果を調査する必要がある。